東海道53次 3日目(小田原宿~箱根越え~三島宿)
2015年5月19日
2015年5月19日
午前4時、起床。―今日、歩けるのだろうか―昨日痛めた足が気になります。
「あれっ」
立ちあがって2,3歩、足を進めると、昨日あんなに私を苦しめた足の裏を突き刺すような痛みがほとんど、ありませんでした。歩けるぞ!急激に意欲が湧き上がってきます。暗いうちから、颯爽と歩きはじめました。
「限界突破」という言葉がぴったりはまる気がするのですが、思うに人間の体や精神、能力といった類は自分の意識が「限界という枠」をはめているに過ぎないのではないでしょうか。この経験はまさに、そのことを体感させてくれた出来事でした。
小田原城の脇を抜け、箱根湯本のローソンでおにぎりを買って朝食をいただきました。食べ終わっていよいよ、天下の嶮の箱根越えの急峻な上り坂が始まります!ここで、旅の根幹を揺るがす大きな問題が噴出しました!
「お前が、持てよ」
「いや、お前だよ」
初日の出発の地、日本橋で写真右の男から餞別にといただいたみかんが、ここに来て急遽、爆弾となりました。過酷な箱根の上り坂で、どちらが持つか、なんとも安っぽいいさかいが始まりました。
空虚に過ぎていく時間に、二人の若者の心に邪念が生じます。
「あ、あそこにローソンのゴミ箱が・・・」
ちょっぴり、良心が傷みながらも二人は足取りも軽く、意気揚々と歩き出しました。・・・とほぼ時を同じくして、ぽつり、ぽつりと雨が降り出しました。いそいそとザックからレインギア(雨合羽)を出して、雨仕様に身支度します。
箱根旧街道の石畳は、独特の情緒を醸し出していました。濡れると石畳がつるつる滑るのには気を付けなくてはなりませんが、大きく枝葉を張った木々のおかげで、雨の日でもあまり濡れずに歩けます。
夕方頃に元箱根に着き、芦ノ湖畔の山道を抜けると、すっかり暗くなってしまいました。この日の目標地点は静岡県三島市ですので、まだまだ歩かなくてはなりません。幸い、この区間はほとんど国道1号線が並走しています。
夜の山道は危険と判断して、国道1号線を歩きました。ですが、ここは山ですので歩道が全くありません。懐中電灯で前と後ろを照らしながら、車道の脇を進みます。猛烈に飛ばすトラックがひっきりなしに横を通り過ぎる中を数時間歩き、やっと峠を下りました。
夜9時を回っていたでしょうか。三島の街に入る手前のビジネスホテルにチェックインして、旅を始めてからはじめて、温かい風呂に浸かり、屋根と壁に囲まれた風の吹かない空間で、暖かな布団で寝られる幸せを体いっぱい、感じながら眠りました。