日本の空き家問題に思う
2017年7月15日
2017年7月15日
空き家問題ですが、これは東京一極集中と少子高齢化、
そして人口減少という3つの要因が複合的に重なることにより
生じています。
特に、日本の人口減少は深刻な問題で、国土交通省の試算によると
これから2050年までに3,300万人も減ると言われています。
これは現時点の日本の総人口の25%にもなります。
現時点でも日本の空き家率は13%を超えていますおり、
推計ですと2035年に30%、そして2050年には40%を
突破すると言われています。
2050年は33年後ですから、30代の方がちょうどリタイアをする頃です。
このときに日本全国の住宅のうちの4割は不要、という状況です。
東京一極集中は引き続き、首都圏としては2050年までも、
それ以降も堅調に人口増加は続くと言われているので、
大枠としては空き家激増は地方での問題です。
ですが、首都圏でも選別が進んでいて、現時点ですでに
以下のように空家が増加し始めたエリアがあります。
・駅からバス便の郊外物件
・坂が急なエリア
・都心(山手線ターミナル駅)から50~60分以上
なぜ、このような状況が起きているのかと言えば、
高度成長期の首都圏への大量の人口流入による住宅不足と、
国策による住宅取得政策によるものです。
また当時、東京都心は下町の工場による大気汚染、
光化学スモッグや水質の汚濁による河川の悪臭など、
とても劣悪な住環境になっていたことも郊外への人口移動に
拍車を掛けました。
事実、23区およびその周辺の人口は90年代頃まで
減り続けていて、私が都庁に勤務していた頃もそうでした。
それが2000年頃から一変して、都心回帰現象が起きました。
これは海外移転による下町工場の減少と下水道の普及による
環境の大幅な改善、そして人の住宅嗜好の大変化によります。
バブル期頃までは「住宅すごろく」というのが流行っていて、
2DKのマンションから始まり、最後は郊外の広々とした
芝生の庭のある一戸建てが憧れのゴール、人生の成功でした。
郊外の山を削り、住宅を建設すると、土木関連から建築、
そして家電に至るまで、日本のあらゆる製造業が潤います。
ですので、首都圏や都市圏の郊外には、大量の住宅地が供給され、
日本経済をけん引していました。
現在、こうした山だったエリアは、坂もきつく、
都心からも遠く不便を感じる人が増えています。
当時は車を持つこともステータス、成功の方程式でしたから、
坂があっても良いと思っていたようですが、現在の若い方は
ミニマミストや断捨離という言葉がはやるほど、物欲が少ないです。
人口減少+人々の価値観の変化により、首都圏でも
住宅地の選別が顕著になってきています。
このような時代だからこそ、目先の物件価格だけで
判断してはいけないと感じています。
ただ「なんとなく買いやすい価格」や「高すぎず安心」
というのは当面は安心感を与えてくれます。
ただ、根拠が無いのであれば、老後を迎える頃に
売るに売れなかったり、貸すに貸せない状況にもなりかねません。
私は良く、家の選択は「アリとキリギリス」の話に例えます。
子育てをして、働いている30~60歳の30年間に、
毎月ちょっとずつ頑張るか、それとも楽をするか。
その小さな積み重ねが、60歳以降の30年間の生活を
形成していると言っても過言では無いと感じています。
日本の空き家問題、というのは日本人の不動産に対する
見方を大きく変えることにもなる、時代のパラダイムシフト
だと認識しております。