夢から覚める
2015年6月16日
2015年6月16日
昨日、テレビのニュースで見た不動産特集が気になりました。
現在、都心および利便性の高いエリアのマンションや戸建ての価格が上昇しています。一方で、都心から1時間以上電車に乗り、駅からはさらにバスに揺られて15分、という物件は値下がりを続けている、という内容でした。
それは、二極化する不動産市場においては当たり前のことですので、特段気にならないのですが、問題は「値下がりしている物件が、さもお買い得」かのように煽っているテレビ局の姿勢でした。
千葉県郊外の新築一戸建て。完成してもなかなか売れず、値下がり続けて遂に1000万円台に突入しました。そこで、子供が増えて手狭になったご家族が購入し、満足しているストーリーがご家族の笑顔とともに、流れます。
買うというのが、常に正しい選択でしょうか。
価値ある物件を購入できる資本力があれば、購入はアリだと思うのですが、「手狭になったから、広い家が手が届く値段だったから買う」という選択は、将来を見据えて慎重に検討する必要があるのではないでしょうか。
考えてもみれば、ライフステージにおいて、3~4LDKという広い空間を必要とする期間は意外と短いのです。結婚をして、子どもが生まれて、二人目が高校を卒業して巣立つと仮定すると、20年くらいでしょうか。
30歳で結婚した場合は、50歳過ぎには夫婦だけの生活に戻ります。その時、2階の2部屋は物置部屋になっていることを考えると、空間の価値とコストバランスが悪いように思うのです。
価値ある物件でしたらまだしも、購入した時よりも物件の価格がさらに下がって、買い手が付かないような状況になっていたら、どうでしょうか。すでに日本の人口は減少しており、首都圏は上昇していると言いつつ、減少に転じているエリアも多いのです。
ライスステージの中で一時、広い空間が必要な時期はあるので、その時に価値ある物件を購入できなければ、その間、賃貸に住むという選択肢も全然アリだと思います。その方が資産を守れるのではないでしょうか。
そして、夫婦だけになったら都心に近くて資産価値のある小さな物件を購入すれば良いのです。もしくは、現時点で価値ある小さな物件を購入して、人に貸して得た家賃収入を、郊外の広い住宅を借りる家賃に充当する、なんて方法もあるのではないでしょうか。
とかく、不動産や保険商品というのは、テレビCMを見てもわかるとおり「イメージに惑わされやすい商品」です。
不動産広告や建売メーカーのテレビCM(リハウスのようなCMも含む)の共通項は「幸せ」です。家を購入することにより、家族のよりどころが手に入ることを子どもの笑顔で示唆したり、そこで過ごす家族の成長物語やリッチな生活のイメージを示すなどして「幸せ」が手に入るのだと印象づけます。
幸せはプライスレスですから、高額の値付けがされている不動産の生臭さを中和することができます。
生命保険のCMはこの真逆です。やってくるかもしれない不幸せというシナリオをいかにリアリティをもって示すことができるかが、腕の見せ所です。アイドルなどを使った明るさの提示も不安の裏返すためのひとつの方法ですし、生保職員の熱心さが困った家族の不安を解きほぐすようなパターンもあります。
不幸は誰もが避けたいものです。ガンになったり事故で死んでしまったりしたとき、家族の生活が大変になってしまうかも、というイメージはそれに対する備えの必要性を印象づけます。
ストーリーは共感しやすく、またイメージも浮かびやすいのですが、危うさもあるということを認識しなければなりません。あなたの相手は、不動産ビジネスあるいは生命保険ビジネスをやっているのであって、慈善事業をやっているわけではないのです。
生命保険も不動産購入も株式取引も、どれも「金融商品」だとシビアに考えることが大切ではないでしょうか。夢から覚めて冷静に住宅ローンの購入を検討し、心配や不安にきちんと光をあてて保険を契約する人になりたいものです。