昨日、ご成約されたクライアントさんのエピソードです。
この方は現在、中央線沿線にお住まいの30代半ばのご夫妻です。これまで1年以上かけて住まい選びをされてきましたが、なかなか決まらずお困りになって今回、私にご依頼をいただきました。
こうしたなかなか決まらない方は、何らかの原因が潜んでいるので、まずはじっくりヒアリングをすることに注力致します。お伺いした内容を以下に記すと、
・ご主人のご実家の横浜と奥様のご実家の千葉。それぞれエリアで探してきた
・これまで100件近く物件を見てきて、なかなか良い物件もあったが「買いたい」
ところまでいかなかった
なるほど、ということで決め手に欠けた理由を突っ込んでいくと、ご主人の実家に近いエリアは坂が多く、「買い物などの日常生活が大変」と乗り気で無いことがわかりました。
一方、奥様の実家に近いエリアは「道が狭く、街並みが気に入らない」とご主人があまり気が進まないことも、わかりました。
こうした検証をしていく中で、抜け落ちていたエリアがあることに気が付きます。ではそもそも、現在お二人がお住まいの中央線沿線のこのエリアは、どうなのでしょうか。お二人は「ハッ」としたご様子でした。
お話を伺うと、そもそもご主人が独身だったころに、勤務先の青山を起点に広範囲で部屋を探されて、利便性や住み心地を考慮した結果、現在お住まいのエリアに決めたことがわかりました。さらに、奥様もとても気に入っておられる状況です。
住まい選びにおいて「予算」と「エリア」の思い込みは起こりがちです。そして、当事者だけだとなかなか思い込みのタガが外れず、前に進まずに閉塞感が生じることがあります。
そこを、信頼関係のある第三者が客観的な視点でアドバイスできる状態であることがたいせつなのです。
その後、お住まい周辺の物件を実際にいくつかご覧になられました。すると、意外とご予算内でご希望条件を満たす物件があることがわかり、その中で1軒、大変気に入られた新築戸建がありました。
奥様のキラキラした笑顔を見て、私はこれまでの経験上、とてもフィットしていることを確信し、お申し込みをしたうえで、ご検討されることを提案致しました。こうすることで、ノーリスクでキャンセルできるうえ、他の方に変われてしまうリスクも排除できます。
申し込みから4日後のご契約予定日まで、奥様は毎日、足しげく物件まで足を運ばれました。再度物件をご覧になられて、日増しにワクワク感が募り、改めてフィット感を味わたそうです。ご主人も奥様の穏やかな表情を見て、購入意欲が高まってきました。
ご契約当日の事です。ご資金の説明をしていざ、契約書に署名と捺印をするところに来て、ご主人の手が止まりました。「お前、ほんとうにいいのか」と奥様に確認をしています。私は、このまま進めてはマズいと思い、契約の相手方に離席していただきました。
聞けば、これまで100近い物件を見たのは確かですが、ここまで真剣に検討した物件は無く、資金面のカウンセリングもしていましたが、改めて不安が生じたそうです。
私は、時間を置いて不安点を洗い出した方が良いと思い、契約を可能な限り延期していただくように要請しました。しかし、人気物件でもあり、粘っていただけた猶予は翌日の正午がタイム・リミットです。
この日は夜も遅くになり、ご主人奥様ともすっかり疲れ切っていたので、翌朝お会いしてお話をしました。開口一番「昨日は契約の場をセッティングしていただきながら、すみませんでした」とご主人が仰りました。
私は、「いえいえ、仮に不動産屋であれば、ノルマがあったりして昨日のような状況になれば考える隙も与えずに畳み込まされるように契約を迫られたでしょう。ですが私は、そのようなしがらみも無い状態で、公平中立な立場でクライアントさんご自身のライフスタイルに合った住まい選びをお手伝いさせていただける、このことが何よりも嬉しく、やりがいがあるのです。」とお答えしました。
「ですが、私の提案力が不足していたために、ほんとうはお二人にとってふさわしい物件であったにもかかわらず、ご決断ができず他の方のものになってしまった、という悲しい思いだけはしていただきない、その一心です。」という気持ちも付け加えました。
その時のご夫妻の安堵された表情は、とても印象的でした。その後は、ライフプランシュミレーションを見直し、繰り上げ返済や期間短縮した場合の月々の支払のイメージを確認でき、かなり安心したご様子でした。
慎重なお二人でもあり、物件に再び足を運び、中を見られて「よし、やっぱりここだ」となりましたが、最後にもう一度、二人で話し合いたい、ということでカフェで30分ほど、お話をされました。
戻られてきたときのお二人の笑顔を見て、私も確信を得て、すぐに契約の相手方を訪問して、無事にご成約になりました。
今回の出来事は、「安心感にこだわった住まい選びの専門家」のMissionは何かを、改めて考えさせられた貴重な体験でした。